全身の骨格図
ワンちゃんには鎖骨がない
鎖骨(Clavicle)は肩関節の可動域に関与していて腕を色々な方向へ自在に動かす為の役割を担っていますが、ワンちゃんにはこの鎖骨がありません。
鎖骨と繋がっている胸骨を支点にして腕を複雑に動かすことができる、そんな役割を持っている鎖骨なのですが、ワンちゃんのように腕がカラダを支えるだけの役割しか持たない、手という概念がない四つ足歩行動物には鎖骨がないのです。
しかしながら腕で体を支える以外にも手を巧みに使って物を掴んだり、気に登ったりする動物には(ヒト程の広い可動域を持ち合わせてはいませんが)鎖骨はあります。
鎖骨は胸骨と 肩甲骨を繋いでいますが、鎖骨がないワンちゃんの肩甲骨(Scapula)は筋肉によってカラダの側面についています。なのでこの肩甲骨周りの筋肉は日頃からとても負担がかかりやすくなっています。
ワンちゃんの背中(脊椎)
○椎骨は背中をつくっている骨で、頭の方から頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎と分かれています。
頸椎(Cervical vertebrae)の骨は品種改良に関わらず7個と言われています。各骨の位置をC1~C7と表したりします。
胸椎(Thoracic vertebrae)の骨は13個あります。「棘突起(きょくとっき)/Spinous process(スピナス プロセス)」と呼ばれる椎骨の突起した部分は、T1〜T10までが尾方向、T11は垂直、T12,13は頭方向に向いています。また、尾の方向へいくほど棘突起は短くなっていきます。
特に高くて長い大きな棘突起が特徴的なT1〜T8部分を合わせて「キ甲部(Withers)」、キ甲部以降のT9〜T13までは「背部」と呼ばれ区分されています。
そしてこのキ甲部の一番高い箇所、肩甲骨上部があたって盛り上がっている所から地面までを測った長さが
ワンちゃん「体高」となります。地面から頭のてっぺんまでと思われている方も多いようですが、実は頭、首の長さは含まれていないのです。 因みにワンちゃんの「体長」は胸の中央の胸骨先端からお尻の坐骨までを測ります。
腰椎(Lumber vertebrae)の骨は7個であることが多いのですが、ダックスフンドのような胴長犬種は8個の場合もあります。棘突起の大きさはL1〜L7の間で小→大→小の並びになっています。
骨盤(Pelvis)は生後数ヶ月で融合する3個の仙椎(Sacral vertebrae)から形成されていて、S3と表します。
尾椎(Caudal vertebrae)の骨の数は犬種により千差万別になっています。こちらはCa6〜20と表します。
このようにワンちゃんの骨の数は犬種などにより違いがあります。
また、背中のラインのスタンダードとして「高いキ甲部に水平な背部の胸椎、わずかにアーチ状になった腰椎」が理想的と言われていますが、これも犬種により背中のラインが尾に向かって緩やかに傾斜がかかっている、腹屈気味など様々な違いがあるところから、理想的なラインというのもそれぞれに違っていたりします。
肋骨の形の違い
肋骨(ribs)の数は13個(12、14個という場合もあります)。
肋骨の形状は顔正面から見ると楕円形をしている犬種が一番多いと言われています(イラスト中央)。グレイハウンド、サルーキ、ウィペットなどの視覚獣猟犬系のワンちゃんは更に幅が狭い細長楕円形(イラスト左端)、ブルドック、パグ、チワワなどは円形に近い形をしており(イラスト右端)、犬種によりその形状には違いがあります。